無意識日記々

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媒体について悩んだフリする大晦日

@utadahikaru: 「桜流し」はDLのみのつもりだったけど、このビデオは形に残したい、DLが苦手な人にも届けたいと思うようになって急遽DVD発売を決めたからこんなに遅くなっちゃった。やっぱりこうやって作品が手に持てるモノになると嬉しい。コメントも悩んだけどがんばって書いてよかった(´`*)


29日のヒカルのツイートだ。DVDを発売するに至った動機(『このビデオは形に残したい、DLが苦手な人にも届けたいと思うようになって』)と経緯(『急遽DVD発売を決めたからこんなに遅くなっちゃった』)が書かれている。

動機はつまり大きく分けて2つのニーズ、フィジカル・コレクションへのニーズ、及び配信購入層以外からのニーズ、にそれぞれ応えるカタチとなっている。この点については概ね歓迎したい。

また、経緯については、途上で心境の変化があった事を窺わせる。(『DLのみのつもりだったけど〜にも届けたいと思うようになって』) それがDVD発売のタイミングの謎への答だとすると、最善だったとはいえないが、非常によくやってくれたと思う。つまり、最初っからフィジカルを発売する計画を立てていたらもっと早いタイミングでリリースできたのではという指摘も有り得るのかなという事なんだが今更云うのは野暮というものだろう。

ただ、意地悪な事をいえば、何故それならDVDシングルのみにしたのかという疑問が残る。日本でこのシングルをCDシングルだと勘違いして購入した人は何人居るだろう。いや勿論よく確認せずに購入する方がよくないっちゃよくないんだが、CDシングルを期待した人とDVDシングルを期待した人、両方を期待した人を較べると、DVD期待派よりCD期待派の方が実数は大きかったんじゃないのか。

商売でやっているのだから、売れない媒体でわざわざリリースはしない、という判断ならわかる。未だに演歌ではカセットテープでのリリースが続いているが、だからといってヒカルがカセットテープでシングルをリリースする必要はない。買いたいという人も居るかもしれないが、営利企業がそこまでケアするこたぁないだろう。ただ、そういう人が居たとしてもMail to Hikkiなんて芸当は出来ないだろうからヒカルにまで声が届きようがないという側面も考えられる。なんか屁理屈だけども、ではCDシングルはという疑問を同じロジックで考えると難しい。

ここで鞘当てがあったと私はみている訳だ。U3側はCDシングルのリリースを主張したが、レコード会社側が難色を示したのではないか、と。つまり、前も述べたようにCDシングルをリリースしても、その売上による利益より、その売上数に関するアナウンス効果のマイナスの方が上回るのではないかという判断だ。ちょっと穿ち気味の妄想ではあるけれど、ここでU3側は「ではシングルCDを売る為にしっかりプロモーションします」というカードを切れない訳で、その中でDVDシングルという案に落ち着いたという考え方も出来る。

で、「レコード会社側」と書いたが、この妄想の中でこれがどこらへんの事を意味するのかという問題がある。エグゼクティブプロデューサーの片翼三宅さん、ディレクターの沖田さん、A&Rトップの梶さん、、、ここらへんを「レコード会社側」と想定すべきかどうか、もしかしたらEMIJAPANレーベルのトップのリリースという事でEMI本社からの声もあったかもしれない。何しろ配信に限れば100ヶ国以上でリリースされるのだし、フィジカルに限ってもアルバムCDやライブDVDなどはアジア10ヶ国(地域)でリリースされる。お伺いを立てる事もあるかもしれない。或いは。新たな親会社、親グループのUMGからの進言もあったかもしれない。わからない。

いや全て妄想に過ぎないのだが。ただ、30万ダウンロードともなれば、収益率如何によってはDVDシングルの売上が少々低くても曲全体としてはペイ出来るのでは、といえそうだ。即ち、これだけ配信が稼いでくれれば、DVDシングルは"セミロングテール"商品として存在価値があると主張出来るし、あわよくば「これだったらCDシングル出してもよかったじゃん」という主張も成り立つかもしれない。もしそうだとすれば案外重要である。桜流しのような、ラジオに全く優しくない曲(フルコーラスで掛けないと意味がわからない曲だからね)でもこれだけ売れるのだから、今後ヒカルが実験的な曲をリリースする際にもシングルCDをリリースできる可能性が高まる。これはファンとしてはとても嬉しい事態である。


しかし、妄想をググッと後ろまで戻してみると。U3側にそもそもCDシングルをリリースする気がなかったケースについても考えねばならないか。つまり、ヒカルにとって既にCDシングルという媒体が生活の中に一切ないのかもしれない、という事だ。CMに出演する際のポリシーを媒体の選別にも当て嵌めてよいものかという疑問はあるけれど、実際もうヒカルはCDシングルを4年半以上リリースしていない。あのPoLEPが最後である。以後はEternally-DramaMix-もBeautifulWorld-PbAM-もGoodbyeHappinessも全て配信のみだ。この事実をどう捉えるべきか。SC2の曲については梶さん本人の発言によると「シングルをリリースしたかったが、スケジュールの都合で出来なかった」らしい。これについてはもう少し突っ込んで訊くべきだったなと今になって後悔しているのだが、スケジュールの都合といってもGBHとCWTCとSMLNADではそれぞれ事情が違う筈である。ただ共通していえそうなのはいずれも「ヒカルの身
体が空いてなかった」という事だ。GBHはSCv2制作の最終局面、CWTCはライブリハーサルの真っ最中、SMLNADはもう人間活動中、という風に…。即ち、シングルCDのリリース=アーティスト本人による積極的なプロモーション、という図式が前提としてあるという訳だ。だからEternallyDMもBWPbAMもGBHも、遡ればThisIsLoveも、いずれもUtaDAの活動やヒカルのコンサートの準備があるせいでシングルCDのプロモーションが十分にできる体制ではなかった、と解釈する事も出来る。まぁThisIsLoveはTVで歌ったけれども。


どの解釈も根拠の薄い妄想に過ぎない。もっと言えば、どうとでも言えるとしか言えないのだ。何より、CDシングルを所望する層自体が、もうカセットテープ愛好者並みにニッチになってきたともいえるんだし。

そんな事より、今は兎に角、冒頭に述べたようにDVDシングルがリリースされた事を素直に喜んでおけばいい。高画質、何より高音質である。ファン、マニアは買わない手はないだろう。更にいえば、このタイミングでヒカルのまっさらな新曲が聴けたのだ。しかもそのクォリティーはとんでもなく高い。その圧倒的な事実の前では発表する媒体が何であろうと小さな事でしかない。極論すれば、桜流しを味わえるプレイヤーを買ってしまえばいいのだ。そうするだけの価値のある曲である。もしこの曲がスマートフォンのみの配信だったら私は一瞬も迷う事なく新しくスマートフォンを購入した事だろう。まぁこんなファナティックの云う事なんてどうでもいいですねすいません…。