無意識日記々

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サザエさん時空

アニメには「サザエさん時空」という言葉がある。登場人物が歳をとらず、同じ年齢のまま何度も何度も永遠に春夏秋冬を繰り返す、というものだ。お陰で視聴者の方は途中で年上だったキャラクターの年齢を追い越したりするようになる。これは実写ドラマも同様で、くまちゃんの好きな「水戸黄門」も、水戸の御老公は永遠に年をとらず諸国を漫遊し続ける。もっともこちらは役者さんの方が歳をとってしまうので途中で何度か代替わりがあった。それはアニメも同じで、上記のサザエさんルパン三世などは中の人が亡くなったりで何人かが代替わりしている。ドラえもんなどは四半世紀を契機にメインキャストを総とっかえした。

そのドラえもん、同じく登場人物が歳をとらないサザエさん時空の作品と分類されているが、ほんのちょっとそれは違う。というのは、タイムマシンというひみつ道具によって、未来と過去という存在がある為だ。そもそもドラえもん自体が未来からの使者なのだが、通常の時空と違うところは、どれだけエピソードを積み重ねても"現在"がいつまで経ってもその未来に辿り着かない点である。即ち、現実の世界のように現在の行き着く先に未来があるのではなく、未来は未来の世界として、過去は過去の世界として時間軸方向にパラレルに存在して、それらの間を行き来するツールとしてタイムマシンが存在する、という構造になっている。そして、各時点の時空はそれぞれでサザエさん時空を形成している。私はこの構造を勝手に「ドラえもん時空」と呼んでいる。(なお、短いエピソード、例えば「ドラえもんだらけ」のような話では現在と近未来が繋がっているが、それはサザエさん時空を破らない程度の時間幅にしか適用されていない)

他にも、アニメ/漫画には、これも「名探偵コナン時空」と呼ばれるものなんかがある。こちらは、一応建て前としては連載開始から半年しか経過していない事になっていたりいなかったりだったのが最早あやふやになり完全にサザエさん時空と呼べる世界を形成しているのだが、黒の組織との戦いに関しては連載と放送の縦糸として延々とエピソードが時系列順に組み立てられていっている。サザエさん時空をベースにしながら、物語の縦糸においては時間が経過していっているというハイブリッド。それが「名探偵コナン時空」だ。

あと、物語の中の時間経過と実世界での連載期間の経過による年数表記が作品中で混在するという奇想天外な「キン肉マン時空」なんていうのもあるが、流石にその話はマニアックになりすぎるのでスルーしておこう。


こんな話を延々としたのは他でもない、「日本人はどの時空が好きか」という観点からみて、文化的な活動をどのような時間感覚で構成するのがよいかという問題提起をしたかったからだ。「笑点」のように延々同じ事を繰り返す番組作りはどこらへんの層に受け入れられているか、という話。こちらも中の人は代替わりし続けているがコンセプトとしては「サザエさん時空」に分類される。では、ミュージシャンについてはどうなのかという話からまた次回なのでございます。