無意識日記々

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『つい先程/残り香と』

週末にタイムラインで『残り香』の歌詞の話題になってて。自分も混ざろうかと思ったのだが140字の中では長文過ぎて間違いなくいつものようにスレストッパーになるので自重した。大人しく自分の日記に書くとしよう。

話題は『残り香と私の部屋で』の『残り香と』がどこにかかるのか(名詞なのか動詞なのか等々)という点だったのだが、これは私もわからない。ヒカルもここは雰囲気でいいと思ってるんじゃないかな。

とはいえそれだけでは面白くないので違った方向から検討してみよう。他のパートの歌詞の内容から推理するのだ。

まず冒頭。

『壊れるはずがない物でも

 壊れることがあると知ったのは

 つい先程』

シンプルに捉えれば、これは破局の比喩だろう。揺るぎない確固たる関係、言うなれば永遠の愛を誓い合えたはずの相手との関係なくも、現実にはあっという間に壊れてしまった。すっかり勘違いして自分自身に酔っていた、と気付かされた瞬間だ。こうシンプルに解釈すれば『つい先程』は文字通りつい先程であって、残り香とは目の前に現実に破局相手の香りが残っていると解釈できる。香りといっても嗅覚に基づいている必要はなく、相手が何か置いていった持ち物でもいいし、この後歌詞に出てくるように飲みかけのワインでもいい。書き置き手紙でもいい。その人が居た“気配”を感じられるものなら何でも構わない。

だがもう一歩踏み込んだ解釈も可能だ。この時、本当に何か物が壊れたと解釈する。どういうことかというと、歌の主人公はその様子をみて漸く二人の関係が壊れて修復不能になった事に気付いたのだ。「ああ、あんなにずっと使ってたワイングラスもこんなに簡単に壊れちゃうのか」みたいになった時点でやっと自分の中で破局を受け入れられた。つまり、実際の破局はこれより少し前の出来事であって、主人公はあまりのショックに現実逃避していたが、この度目の前で物体が破壊されたことで漸く破局を受け入れるだけの冷静さが戻ってきた、と。この場合壊れた物体はワイングラスじゃなくても二人の思い出の品とかでもいいかもしれない。

この解釈に基づけば、『残り香』はもう実際に部屋には無い。相手の居た気配すら消えた部屋でその気配を求めて彷徨う主人公の描写となろう。

斯様に、歌詞の他の部分の読み方ひとつでサビの歌詞の解釈も変わる。次回では更に他の箇所の歌詞でもどうなるかをみてみよう。