無意識日記々

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シャンパンがパンッ!

ヒカルの音楽性は多岐に渡るので変わり種と呼べる曲も果たして変わり種と言っていいのかそれ言い始めたら変わり種の方が多数派にならないかとかいう懸念が出てくるのだが、それでも敢えて変わり種と言いたくなるのが『This Is The One』に収録されている『Poppin'』だ。この曲は本当に変わっていると思う。

どこがどう変わっているかというと、ヒカルの(Utadaの、ね)楽曲には珍しい事に「機能性重視」な曲なんだよこれ。

元来、宇多田さんの楽曲というのはそれ自体に価値があるというか、ただ鑑賞するだけで満足できる歌が多いのだ。勿論アップテンポの楽曲でノリノリになったりもするのだが、「いやぁ、やっぱいい曲だねぇ」とか「かっこいいねぇ」とか、そういう感想が出てくることが多い。

『Poppin'』は違う。曲が終わった後に「いやぁ、楽しかったねぇ」と言うのだ。実際、私もライブで体感してそう思った。

つまり、この曲は、これ自体に価値があるというよりは、歌ったり、踊ったり、拳を振り上げたりといった「目的の為に」作られた楽曲なのだ。まぁ有り体に言えば「ライブ向け」ってヤツだね。楽しい気分にさせてくれて声を出したり身体を動かしたくなったりする曲調。で、実際声を出して身体を動かしてスッキリする。「あー楽しかった」となる訳だ。「人を楽しませる機能性」を持ったこういう作風はヒカルにはほんとに珍しい。あとは『甘いワナ』とか『蹴っ飛ばせ!』とか、そういうのになるかな。なお『ぼくはくま』と『パクチーの唄』は聴き入ってよし口遊んでよしのオールマイティな名曲だ。機能性と鑑賞性の両方を併せ持っている。

『Poppin'』はそうじゃない。真面目に聴いていたら腹が立ってくるくらいに軽薄な曲調だ。もっと言えば下世話である。そもそも『Poppin'』というタイトル自体が「シャンパン(か何か)のボトルを開けてパンッと泡が弾ける音」のことだ。どんだけパーティ気分やねん。

だからこそ楽しい。いつも誰にも真似出来ないようなエモーショナルな歌を聴かせるヒカルのあの凄まじい歌唱力が全く話題に上らない程に活かされていない、徹頭徹尾オーディエンスを楽しませるだけの、いや、ミュージシャンと観客が一体になって楽しむための楽曲だ。勿論あたしもホノルルで『Hey! Hey! Hey! Hey! Hey! Hey!』ってやりましたよ。控えめに。(笑) ほんとに楽しかった。10年前だけどね。

日本だとどうだろうねぇ。みんなシャイだからな。『Automatic』の4回パンチですらやってる人が殆ど居なかったからな『Laughter In The Dark Tour 2018』では。今後は長年のリスナーは高齢化するし若いファンは大人しいしでますますそういったノリから遠ざかりそうだ。いきなり『Poppin'』自体を演奏しても知名度がないからポカーンだろうし。日本語レパートリーの中では『Kiss & Cry』あたりをライブ・アレンジしたらいいんじゃないかとは思うんだけどね。キャンシーとのマッシュアップで、この曲をいじくるのに皆慣れてそうだし。どうだろう。

そろそろ宇多田名義の日本語曲でも、そういった、リスナーを楽しませる&演奏者も楽しめる機能性重視な楽曲を作ってもいいのかもしれないね。特にダヌパがまだ幼いんで、そういう歌で楽しませるような時間がコンサートにあった方がいいんでない? どうよどうよ? こどもをダシにして楽しい曲作んない???