無意識日記々

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立つか否か、それが問題だった。

「演奏会への聴衆意識」というのは時代や地域やジャンルで本当に様々でね。今から半世紀前の日本ではロックコンサートですら「座って観るもの」だった。ネットのない時代に英欧米でのコンサートの様子がそうそうすぐに伝わってくるものでもなく、どうやら海外では立って騒ぐらしいと伝わってきたものの加減がわからず盛り上がり過ぎて最前列で圧死事件が起きるとかあった。最近きかないけど、報道されないのか、それともみんな節度を知っているのか。

ヒカルさんのライブでは、どうやら、お客さんが大人し過ぎるのが多分ヒカルさんから見た長年の課題だった。初期のメッセをみればわかるとおり、ヒカルはライブコンサートを「立って騒いで盛り上がるもの」という意識で観ており、自分が観客である時のイメージをそのまま自分が舞台に立つ側になった時も持ち込んでいたようだ。初期のラジオを聴けばそもそも人としてテンションが高いというのもみてとれた。そらライブで騒ぎますわね。

ところが最近は、本人も言っている通りヒカル自身のテンションが下がってきており、“落ち着いた大人の女性”化している。その変化を年齢のせいにするか心境の変化のせいにするかは置いておくとして、現実にそうなってるので、特に『Laughter In The Dark Tour 2018』では、シックなドレスに身を包みじっくりと歌を聞かせるというスタンスが実に馴染んでいた。そもそも「盛り上がっていこうぜー!」でいくんなら1曲目は『道』一択だったろう。まず『あやた』をじっくり聞かせてから徐々に『道』と『traveling』で……という流れ自体、甚だ大人しい。

しかしこれは、かなりのファンにとって願ったり叶ったりだ。昔から宇多田ファルは「立って盛り上がる勢」と「座って聴き入る勢」が半々でなかなか相容れなかったのだが、どうやらこれで趨勢は決まっていきそうだ。

とはいえそこはヒカルさん、『Automatic』の4回パンチからすると、まだまだ盛り上がるライブに未練もある模様。椅子席のないスタンディングアリーナでのライブでもしてアップテンポな選曲でイケイケに攻める公演も企画するかもしれない。「40代はまたイケイケ!」? ……まさかねー(笑)。