『Time』がフル解禁された時に強烈にインパクトを残したのはやはり
『逃したチャンスが私に
与えたものは案外大きい
溢した水はグラスに返らない 返らない
出会った頃の二人に
教えてあげたくなるくらい
あの頃より私たち 魅力的 魅力的』
のパートだろう。あそこでいきなり曲調が変わりつつもイントロから流れ続けるメイン・テーマ・フレーズが淡々と繰り返される辺りが肝なのだが、私が初めてここを聴いた時に思い出したのは『Making Love』のこの箇所だった。
『ヒアタリヨシ モヨリエキチカク
トナリノジュウニンモイイヒトネ
ヤサシイカレトノケイザイガク
ミカケニヨラズシッカリモノデ
ワタシトセイハンタイノアナタ
アラタメテイウノハテレマスネ
ワタシガハジメテホレタオンナ
イマカライウコトヲキイテ』
特に似ているということもないのだけれど、曲調の変わり方と歌詞の載せ方がなんとなく連想をはたらかせたみたい。
この『Making Love』は御存知の通り長年のリアル親友さんに贈った歌なのだが、だからヒカルがインスタライブで『Time』の仮タイトルが親友の投与している抗癌剤から取られていたと言ったのを聞いた時にはなんだか腑に落ちたのだ。同じ匂いがしていたから。
14年も前の曲だし今はロンドンに住んでいるしで、「親友」と言っても同じ人かどうかわからない、と言えなくもないのだけど、ヒカルのあの淡々と病気について語る感じや、本来ならトップ・プライバシーである病歴を披瀝する事になる投与薬の名称をあっけらかんと言ってしまう態度からして生半可の信頼関係ではない、一朝一夕の関係ではないように思える。何より、『Making Love』で
『あなたに会えてなかったら
親友はいらないね』
と宣言した手前、他の人の事を『親友』と呼ぶのは躊躇われるのではないかなと。もし他に仲がいい人が現れたとしても違う呼称にする気がするのよ。ソウルメイトとか朋友とか心の友よとか、何でも。
まぁそれはさておき、『Making Love』でも『無情に過ぎ行く時間なら』というフレーズがあるのだけれど、それと『Time』のこの『出会った頃の二人に教えてあげたくなるくらいあの頃の私たちより魅力的』という一節を併せて聴くと、『Making Love』でそのあとにくる『少し疲れて私たち Growing up』が、それぞれが成長する事と共に、二人の関係性自体もまた成長するものだったろう事も予言していたように思えてきて、何ともほっこりするのでした。歳とるのも悪くないもんだね。
なお『Making Love』には『感じてないのにフリはしたくない』というフレーズも出てくるけどこちらは『誰にも言わない』に通じるよね。その話はまたいつか。