無意識日記々

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I won't tell me.

『誰にも言わない』の『一人で生きるより永久に傷つきたい』という言葉の強靭さ。驚きを以て迎えた記憶があるが、何もヒカルは最初からその強さを持ち合わせていた訳では無い。人並み以上に傷つく事を恐れた上でこの境地に到ったから尊いのだ。

傷つく恐怖。それは一年半前の『Face My Fears』で歌われた事だった。

同曲のJapanese Versionではまず『生まれつき臆病な人なんていない』と歌われる。怯むのはそこからら成長したからだ、とでも言うように。そして、English Versionの方では『A mile, could you walk in my shoes?』(この道を私と歩ける?)と相手を値踏みするように訝る。信用に足る相手かどうかまだ確信が持てていない。そういった背景を背負って『Let me face my fears』、私の恐怖と向き合わせてと願うのだ。臆病を知り相手を訝る自らの弱さ。fearsと複数形になっているのも、裏切られる事を恐れる弱さと、自分自身を信じ切れない弱さの両方があるからだろう。

そうして『Watch me cry all my tears』、私が全ての涙を流す所を見て、即ち実際に前に一歩出てfearsと向き合って傷ついて、その上で『初めてのように歩きたい』、臆病を克服した自分になりたいと願い『私の知らない私に早く会いたい』と歌うのだ。

今。臆病を克服して『知らない私』になれた今だからこそ『永久に傷つきたい』と心から口にできる。それらの上で『誰にも言わない』の英題『I won't tell』にひとつ付け加えるのなら"me"だろう。“I won't tell me.” 私は私がわからない。それは戸惑いではなく確信だ。ここに至って漸く『誰にも言わない』は生まれた。傷つく恐怖を克服して傷つきたいと思えるようになれたのだった。