無意識日記々

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黙祷:静寂の経験

昨日8月5日の【今日は何の日宇多田ヒカル】で取り上げられていた14年前のメッセ[くまちゃんの旅日記〜新潟編〜]が堪らなく好きでね。写真も文章も。この醸し出す空気感よ。せめて文章だけでも引用しとくか。

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『新潟はいいところだね ひかるちゃん

まくらさんがいるよ

しゃけがおいしいらしいね 買って帰ろうよひかるちゃん』

「くまちゃん、熊はしゃけを自分で獲るんだよ。」

『えー ぼくそんなことしたら 汚れちゃうよ』

「そうだね。じゃあ買って帰ろうか。」

『うん』

http://www.utadahikaru.jp/from-hikki/index_64.html

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全国を回る二ヶ月間余りのコンサート・ツアー。そのライブとライブの間のひとときを覆う静寂が伝わってくる。写真もそうだけど、文章で“静寂”を伝えるのって難しくって。それが伝わってくるのが名文たる所以。

このあと9月上旬にはヒカルは広島にも訪れ、原爆ドームをみて感じた事についてもメッセージを寄せてくれている。この時もまた、その場の静けさが伝わってくるような筆致で大変印象深い。こちらも同じく喧騒と喝采に満ち満ちた公演と公演の狭間に浸った静寂を湛え、且つ61年前(当時)の今日当地を襲った大虐殺の阿鼻叫喚との隔世感からくる平穏の空気がそれと混ざり合って、なんとも言えない感慨をヒカルに齎していたようにも思えた。公演者にとっての旅、ツアーの醍醐味はこういった静寂の経験に依拠するのではないか、と公演者になった事の無い立場から想像してみる。

もしかしたら今のヒカルは、くまちゃんとのみならず愛息様ともこういった会話を交わしているのかもしれない。『あなた』で描かれている部屋でのそんな二人の風景を想像して私は今日もまた今日を生きようと思った。