無意識日記々

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ファン離れを防ぐ一つの手段としても

エルエムワイケイ(LMYK)のデビューは、RIAがレーベルとして回っていけたらなぁという従前からの期待に応えてくれた感じがしていて大変喜ばしい。

ヒカルは、基本的に無期限での契約で時間に縛られずにリリースをしている。破格だが当然だろう。レコード会社を支える方のポジションだからね。下手は打てないのだ。だが、それはある意味で、他の、期限ありで契約を遂行している“普通の”ミュージシャンたちに頼っているともいえる。

音楽を日々楽しむ方は、なかなかひとりのアーティスト、ひとつのグループだけに注目して日々を過ごすのは難しい。人は飽きる。なんだかんだで、複数のアーティストだったり、“今話題のアーティスト”をチェックしてみたりして過ごしている。

メタラーの自分ですら同様で、おっさんメタラーといえば時流に疎くずっとメタリカパンテラを聴いてると思われてそうだが──それはそれでそうなんだけど(笑)──、一方でこうみえてこのジャンルは毎月いや毎週コンスタントに新作が出ているのでそのチェックに忙しい。

中には「レーベル買い」なんてのもあって、昔も紹介したと思うが、「Frontiers」というレーベルなどは、その名の通りJOURNEYみたいな作風のバンドを多数抱えていて(彼らのアルバム名が由来だね)、その毎月のリリースをチェックするのがメロディアスハードロックファンの日常になっていたりする。信頼出来るレーベルがひとつあれば、連綿と続く毎日の中で飽きること無く音楽を楽しむ時間を作れる。

ヒカルも勿論それを提供する中のひとりとはいえ、そういった“サイクル”の中にはない。唐突に現れて唐突に居なくなる感じだろう。

これが、レーベルメイトが充実してくれば構図がハッキリする。まずは宇多田ヒカルという大看板がズシーンと存在してレーベルの存在価値(と収益)を担保する。それをバックアップにして、若いアーティストたちがヒカルの不在期間を埋めてくれればいい。少々失敗しても、なぁにウチには宇多田が居るからと言えるんだから心強い。

これは、「後進の育成」という面からも有り難い話だ。ソニー全体だと、如何にヒカルが支える側とはいえそれでもone of themになってしまうかもしれないが、何人かで運営している規模のレーベルにとってはまさに屋台骨大黒柱と言えるだろう。実際の財務状況は知る由もないけどな! その中で、多少の失敗も容認できる環境で新しいアーティストが新しい挑戦ができるとすればこれは好循環が期待できる。

本来、ヒカルがファンクラブを持たない理由が照實さん曰く「いつでもやめられるように」という事だったことからもわかる通り、ヒカルは音楽産業に貢献したいとかいう社会的意義は前面に打ち出さないスタイルだった。それはそれ、これはこれ、みたいな。しかし今や、なんというのか、企まずして巧まずしてそういう社会的意義の高いポジションになろうとしているのかもしれない。本人は嫌がりそうだけど(笑)、でも、レーベルメイトが増えて、宇多田ヒカル的な一匹狼コンセプトなアーティストからのアウトプットが年柄年中楽しめるようになるとすれば、ぶっちゃけヒカルからファンが離れていく機会も減るかもしれないからね。これだけ娯楽が多様かつ多彩になった現代では、意識を向けさせ続ける事は非常に大きな課題なのだから。まぁ、無理しなくてもいいんだけども。そういうやり方もありますよってことでひとつ。