無意識日記々

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主題歌の構成と映画本編のシンクロ具合

※ 映画のストーリー概要の話なのでくれぐれもご注意下さい。

『One Last Kiss』の曲構成は「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」と同型だという話を物凄くざっくりみてみよう。

まず出だし、『初めてのルーブルは…』の部分はオープニングのパリ市街戦に呼応する。そのまんまですね。

映画は次に第3村に舞台を移し人々との交流の中からシンジが立ち直っていくまでが描かれるがここらへんが

『寂しくないふりしてた

 まあ、そんなのお互い様か

 誰かを求めることは

 すなわち傷つくことだった』

あたりに簡潔に纏められている。

そして後半から映画ではシンジが再びヴンダー(あのでかい艦な)に乗り込んでエヴァンゲリオンが入り乱れて活躍するヤマト作戦からマイナス宇宙の場面に推移していく。

『One Last Kiss』の方はどうなっているかといえば、以前この曲はブレイクを挟んで前半がオリジナル&後半がリミックス風味に構成されていると書いたが、そのリミックス・パートが映画でいうエヴァンゲリオンたちが活躍するパートにあたる事になる。

オーガニックな人との触れ合いを描いた静かな映画の前半と較べて後半は人型兵器が画面を占拠しているわけだが、『One Last Kiss』でも、人の声の暖かさを感じさせる楽曲前半とは打って変わって後半ではヴォーカル・パートはどんどん脱構築され切り貼りされて畳み掛けられていく。つまり、前半での意味を持ったセンテンスから後半ではそれらがただの音に変わっていくような感覚だ。ただの音になってひたすらリフレインされる『忘れられない人』や『I love you more than you'll ever know』や『Oh oh oh oh oh』のフレーズが入り乱れる様は、人の思いを乗せて縦横無尽に画面を飛び回るエヴァンゲリオンたちを象徴してるかのようでな。

特に、バックの独特の合成音、あの、濡れて凍ったグラスを磨いたような小気味よい音をバックにして、それらをサンプリングして重ねたような、人のような機械なような声色で奏でられる『I love you more than you'll ever know』のリフレインは、劇場で初めて聴いた時「これはエヴァンゲリオンという概念をサウンド化したものではないか」とえらく感激したヤツだ。

この映画にはエヴァンゲリオンとかアダムとかリリスとか、兎に角人の形をしていながら人ではない何かがどんどん登場する。それらは人にはない能力を持っていたり逆に人にはあるものが欠けていたといった人に似ていて人にあらざる者たちだ。そういった存在をこのエフェクトをかけた『I love you more than you'll ever know』で表現しているとしたら、いやこれホント上手くできてるなぁと。AGクックはん素晴らしいでんな。EVAのこと知ってはるんやろか?(なぜか関西弁)

で楽曲は最後、

『吹いていった風の後を

 追いかけた眩しい午後』

でしっとりと締め括られるが、ここらへんはもう映画のラストシーンの持つ清々しさと切なさを完璧以上に表現しきっていますわね。言うことなしだわ。

斯様にして『One Last Kiss』は「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」映画本編と同型の構成をしている。極々大雑把にでしかないけどね。いや二時間半の映画を4分間のカタルシスに纏めるんだからそりゃ大枠にもなるわいな。本当に、真(シン)の意味で『One Last Kiss』は映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」の“テーマ”・ソングとして相応しい。テーマの体現そのものなんだから。ヒカル史上過去最高に映画とシンクロした名曲だと言えるんじゃないかな。