日航機墜落事故から36年か。当時も衝撃的なニュースだったな。
故人に有名無名もないものだけど、坂本九がこの事故で亡くなったのは大きかった。日本語歌詞で唯一の全米No.1ヒットソング「Sukiyaki/上を向いて歩こう」を歌った人だったのだから。
宇多田ヒカル1998年の衝撃的なデビューを語る時に欠かせないのが同年10月に赤坂BLITZで開催されたイベント「Music Talks '98」だ。この業界関係者を集めたコンベンションでヒカルはデビュー曲の『Automatic』と、その坂本九の『Sukiyaki』を(英語で)披露してその圧倒的な歌唱力で皆の度肝を抜いた、そうである。
その時の音源は2014年に発売された『First Love』15周年記念盤のデラックス・エディションに収録されている。ヒカルが今聴いたら顔を真っ赤にして恥ずかしがるのかもしれないが、当時15歳の堂々たる歌唱である。
この時に、デビュー曲を歌うのは当然として、シングルにもアルバムにも収録されない『Sukiyaki』を選曲した所に、この曲の存在感と存在意義を見い出せる。日本発でグローバルに、というコンセプトを前面に押し出す時に、この曲ほどメッセージが伝わりやすい歌もなかったのだった。
実は私、『誰にも言わない』の
『One way street 照らす月と歩いた
好きな歌口ずさみながら』
という歌詞を初めて耳にした時、「上を向いて歩こう」の
「悲しみは星のかげに
悲しみは月のかげに
涙がこぼれないように
泣きながら歩く
ひとりぼっちの夜」
の部分を思い出していた。『誰にも言わない』は泣いている風ではないけれど、ひとりで月灯りの下歩いて帰っていく感じが何とも風情を感じさせてて。いいよね。
今や業界の構造が変わって、日本語の歌であってもグローバルな知名度を得れる環境は随分と整った。そんな中で、こういった、日本語で歌われる風情がどれだけの人々の心に届くか、少し興味深い。目下のヒカルの最新曲『Find Love』は英語詞で、グローバルな展開を睨んだ楽曲なのは明らかかと思うが、それと同時に、この坂本九のように、日本語のまま受け容れられていく歌もまたあったらいいかなとも思うのでありました。夏だねぇ。