無意識日記々

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あの頃は不景気で困りましたね

次の新曲の歌詞って結構難しいかもしれない。タイアップ次第ではあるんだけれど、恐らくここから年末まで、日本語民の気分はどんどん変わっていく。

要は、感染症禍の影響がどれくらいまで長引くのかという話。ワクチン接種が行き渡って、皆が解放感に包まれているのか。或いは、変異株が更に広まって3回目の接種が必須となっていくのか。どちらになるかでリスナーの気分は全く変わるだろう。歌詞の内容もそうだが、リリースのタイミングも非常に難しい。

タイアップ相手があって、それが実社会と無関係なタイプのものなら構わない。異世界物とか時代物とか。だけど、ニューアルバムのコマーシャルと共に流れる歌とかになると、どうしても“今”を意識せざるを得なくなる。家で自粛してテレビを観ている人に「今夜は外に出てはしゃごう」みたいな歌詞を放り込んでどれくらい共感が得られるやら……特に宇多田ヒカルというアーティストは、どうしてもマスメディアを使ったプロモーションになるから「お茶の間に馴染むかどうか」は令和の現代でも相変わらず問われる筈だ。

『Find Love』は英語の歌だから今は気にしていない。英語圏民の皆さんは違うだろうが、恐らく、日本語圏内とは異なり、UTADA HIKARUというアーティストが世相と符号するかどうかというのはない筈だ。熱心なファンは世の中がどうあろうがヒカルの歌声に耳を傾けるだけだし、多くの人々にとってUTADA HIKARUはKINGDOM HEARTS SERIESの歌を歌う人なので、ファンタジーの住民なんじゃないか。寧ろ普段の生活の鬱憤を晴らす為にもゲームの中の世界では暫し現実を忘れさせて欲しいまであるだろう。他のアニメの主題歌なんかも同様で。

日本語圏ではどうしても「不特定多数」が相手になってしまう。そこをどう掻い潜るか。或いは、大きく巻き込んでいくか。

2001年にヒカルは『traveling』で『不景気で困ります』と歌った。だがこれは例えば好景気に沸く1986年では成り立たない歌詞だった。ヒカル自身どこまで経済を読んでいたかは知らないが、後からふりかえっても、2000年暮れから2002年明けまでの十数ヶ月間、つまり2001年という年の殆どは、国際情勢の影響もあり、失業率は上がり続け実質経済成長率はマイナスを叩き出すなど、本当に本当に不景気だったのだ。その不景気の終わりかけの頃(2001年11月28日)、つまり、もうどん底で開き直るしかない空気の中にあのハイテンションな『traveling』をリリースした。時代の風を読んだかどうかはともかく、結果としてドンピシャにハマったのだ。オリコンだと年間3位、JASRACだと年間2位なのかな、兎に角特大ヒットを記録したのだった。

その時のような「圧倒的な追い風」が吹くかどうかは…………、って表現は『WINGS』に慣れ親しんだここの読者には不適切かな? 『向かい風がチャンスだよ今飛べ』だもんねぇ。なんだろ、ま、えっと、そう、もうどっちでもいいか!(笑) ヒカルの次の日本語曲が時代の気分に沿った曲だろうがそうでなかろうが、どっちに転んでもそれはそれで興味深いだろう。何より、私らはまず先に『Find Love』で楽しく踊れる筈だからね。フル解禁がいつまで経っても来ないので最近ずっとなんだか右往左往させられているというか泳がされてるというか踊らされてる気分を味わわされ続けているんですけどねっ。

という訳で、『サイコロ振って出た数進め』になるのか『サイコロ振って一回休め』になるのかは、それこそ実際にサイコロを振ってみないとわからない。「出た目に合わせて参りましょう。」──私の好きな言葉なのですが、兎に角悩むくらいならリリースしちゃいましょEPIC SONYの皆さま!