無意識日記々

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不憫中毒

今日は『Addicted To You』発売22周年記念日。今年『君に夢中』が発表されるにあたりそのタイトルがお互いの翻訳であるとして『Addicted To You』にも再びスポットライトが…当たってねーなあんまりっ。

そうなのだ、気がつけばこの曲、最近はそこまで人気を集めていない。コンサートで歌われなくなって久しい、というのがいちばん大きい気がするが、しかし、恐らくいちばん大きいのは「発売時に余りにも騒がれ過ぎた」ことではないか。

1999年は宇多田ヒカルが社会現象になった年だ。デビューシングル『Automatic / time will tell』の発売は前年1998年の12月だがチャートを上り始めたのは明けて翌年の1月から。そのあと3月にアルバム『First Love』が発売されて5月に同作が「日本市場史上最高売上CD」となった。そのあと6月に集中的に地上波テレビに出演してそのキャラクターがお茶の間の知るところとなる。その後も8月に「Natural Breeze Concert」に参加するなど話題を提供し続けて、皆の認知が極限に高まった状態での初の新曲発売となったのがこの『Addicted To You』だった。極論すれば、この曲がどうとかいうより、「日本中が注目される中での宇多田ヒカルの新曲」としての扱いだった。

例えば将棋で藤井聡太が快進撃を続けたとして、ワイドショーが取り上げるのはその日のお昼ご飯の献立であるように、音楽家宇多田ヒカルが新しい作品を発表するにあたって取り上げられたのは主に眉毛の話題だった。そりゃ歌手なんだから見た目も大いに大事だが、肝心の歌の内容が話題になるなんてことは殆どなかったのだ。勿論ファンサイトとかは別にしてね。ワイドショーやゴシップでは、という。藤井聡太の将棋内容が話題にならないのと同じように、ね。

結局、なんだかそのままで来たのかもしれない。『Addicted To You』は、その楽曲の魅力が語り尽くされないまま22年が過ぎた。『君に夢中』の方は発売される前から「歌詞がいい」「泣けてくる」とコアなファン以外のドラマ視聴者の皆さんからも好評で、何より歌自体の内容がしっかり話題になっている。シンプルに、ドラマ制作側が楽曲自体をリスペクトしているということだろう。『君に夢中』は、これからも「最愛」の名場面と共にそのヒカルの切ない歌声と歌詞が思い出されるだろうが、『Addicted To You』が一般人(誰?)に連想させるのは眉毛だ。『First Love』アルバムが大いなる太眉アピールだった(と見る方が勝手に解釈してただけだけど)ところからの細眉とはいえ、それはねぇ。

そう考えると、歌詞の全体像に誤解を与えかねなかったとはいえ、発売から十数年経ってから出回った「別に会う必要なんて無いのが宇多田ヒカル」コピペは、ちゃんと歌詞が注目されたという意味においては、有難いことだったのだなぁとついつい思ってしまうのでした。あぁ、何それどこまでもこの曲は不憫ってこと!?