無意識日記々

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うそじゃない “ ” ことなど

『君に夢中』の

『嘘じゃないことなど

 一つでも有ればそれで充分』

の部分を聴く度にあたしゃ槇原敬之の「もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対~♪」を思い出してしまうのだけどこれ今の世代に通じるんだろうか? えぇっと、ウィキってみると、槇原敬之の「もう恋なんてしない」は彼にとって5枚目のシングル曲で、1992年5月25日発売…ってもう30年近く前なのか!こりゃわからなくても仕方がないわな。あたしが古いと言われるヤツや。

まぁつまり、一回聴いただけだと「え、結局どっち?」って一旦立ち止まってしまうのが似てるっていうただそれだけなんだけど、ヒカルの場合ここでもそれをわざと敢えて演出してる節があるんだよな。

大体、この部分の直前の歌詞が

『嘘が下手そうなやつあるある』

なのが甘い罠の始まりで。このフリがあるから次に

『嘘じゃない……っ』

って歌われた瞬間にあれ?これ嘘が下手な人が必死に弁解し始める一言目?ありがちなやつ?と思ってしまうのよ。そう、文字に起こすと

『嘘じゃないことなど……』

って一続きになるんだけど、実際の歌い方は

『嘘じゃない…

 …ことなどひとつでもあれば…

 …それで充分』

みたいに真ん中で一旦ぶった切ってタメるのよね。そしてそのあと更に『あれば』のあとで短く切る。この歌の区切り方のお陰で「ん?今なんつった?」感が増幅される。ただ歌詞を書くだけじゃなくてメロディに対する言葉の乗せ方と聴かせ方まで計算してるのホントまぁいい性格してるというか(笑)。

なので、結局この一文で言いたいのは「普段嘘を吐くこともあるかもしれないけど、そんな中でも一貫してることをひとつ持ってればいいんじゃないかな」と、「嘘も方便」を肯定してる感じかな。ある意味、ここでの歌い方で、「嘘じゃない、嘘じゃないから!」と必死に弁明する人を宥めてるというか、優しく包んでるというか。「別に嘘を吐いたっていいじゃんねぇ?もうちょい気楽に考えよ、でも、譲っちゃいけないとこはちゃんと保とうぜ。」っていうヒカルパイセンならではの優しいアドバイスといったところか。確かに、嘗ての名言『でも、いつでも本気』を思い起こさせるなぁ。

ここのポイントは、即ち、ただ「嘘じゃないことなど一つでも有ればそれで充分」と主張するに留まらず、そこで躍起になって必死に言い募るような人を優しく宥める風景を重ね合わせる効果を出す為にヒカルが施したのがただ「歌の間を取る」事だけだった、というところですよ。全く余計な説明を加えずにこう聴かせるって地味なんだけど物凄い技巧だと思う。ただ詩を書くだけではない、歌のための言葉を書く生粋の「作詞家」なんだなと改めて痛感致しましたです、ハイ。