無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

I just didn't know what to say next but he knew

で前回話に出した『気分じゃないの(Not In The Mood)』に於ける

「(宇多田ヒカル史上)至高の77秒間/The Greatest 77 seconds in UH history

について、前にツイートでもこの日記でもそれぞれ触れているけど改めて付言しておくか。ここは歌詞でいうと

『Hey how are you ?

 How has your day been ?

 I've been quiet

 Just didn't know what to say

 Hey how are you ?

 How has your day been

 I've been quiet

 It's just one of them days』

のパートからピアノソロ及びキーボードソロの所までの、ランニング・タイムでいえば4:17~5:34の部分。この後のダヌくんによる

『Not, not, not in the mood』

のコーラスが始まる直前までだ。ここに到るパートの数々もとんでもなく素晴らしいが、そこから更にフックラインのギアを上げていくとかホント正気の沙汰じゃない。アルバム全体、いやさ宇多田ヒカル史上全体の中でのハイライト、ピーク・モーメントであるとすら言いたい。

そう感じる事を補強するのが、そう、上記のようにその次に来るパートをダヌくんが書いているという事実だ。ヒカルの話によると

「部屋で作業してたら押しかけてきてこの曲を聴きたいというので聴かせたらこんなのはどう?と歌い始めた。よかったので録音して採用した。」

ということのようだが、そんな経緯をさて置いて音だけを聴くと、もうこのパートを出し切った後に自分で繋げる音はなかった、とヒカルが思う所に他者の─といっても息子だが─インプットが現れた、という風にみてとれる。

どうにもこれが、次への伏線になっているような気がしてならない。前も触れた通りだが、今後、彼の意向によっては、彼がヒカルの曲作りにガッツリ関わってくる可能性がある。そして、その役割とは、今回のように、ヒカルが作ったピークから更にその先に連れていってくれるような、もう無理となった時にそっと背中を押してくれるような、そんな存在感を持ったものになりそうに思えるのだ。

今までもヒカルは何人もの共作者を得てきたが、恒常的なものに発展したケースはなかった。強いて言えば照實さんがその責務を─恐らく30年以上に渡って─担ってきたのだろうが、その役割を今度は息子が引き継ぐとなれば胸熱が止まらない。なんというか、現象論的な言い方で不適切にはなるが、「私と対等に渡り合える作曲者が出て来ないならもう自分で生んで育ててしまおう」みたいな風にすら見えるのだ。「ワッハッハ、おれの首を狙う剣士をおれの手で育てろというのか!?」という鷹の目のミホークの高笑いが聞こえてきそうだが(すいません、「ワンピース」ネタです)、ヒカルさんも長期的に遠大な計画を実行中なのかもしれない。勿論、無意識で、ですがね。そりゃ本人が音楽をやっていきたいかどうかなんて、こっちが決める事じゃあないからねぇ。果たして次作でも共作はあるのか。もしかしたら今後のいちばんの注目ポイントはそこになるかもしれません。