無意識日記々

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『ぜひ大音量で』

「キングダム 運命の炎」予告編、「キングダム」、「キングダム 遙かなる大地へ」という順序で見てきてさてヒカルさん今回はどういうアプローチで主題歌を書いてきたのかなというと、結論から言えばまだよくわからない。

つまり、『Beautiful World』や『桜流し』や『One Last Kiss』並みに作品に寄せてきたのか、或いは『Time』くらいの距離感なのか、という、そこのポイントね。

普通に考えれば「運命の炎」のストーリーを知らないと合ってるか合ってないか判定のしようもない、ってのが妥当なとこですわね。そこは上映までに原作漫画やアニメをチェックするかどうかで追々見極めていくとして。

例のヒカルコメ。

『今の私が思う幸福とはなにかの歌ができました。ぜひ大音量で』

1つ目のキーワードが『幸福』。こちらは歌詞に直接表れてくるだろうことが既に『幸せ』という単語が聞こえてきてる時点で疑いが無い。そして2つ目のキーワード。

『ぜひ大音量で』

これな。何故か「ぜひ劇場で」ではないんだよ。物凄く意地の悪い解釈の仕方をすれば「別に映画館行かなくてもいいからお家のスピーカーのボリュームを目一杯上げて聴いて欲しい」と捉えても構わない訳で。

これをわざわざ言う意味はあるのか? というのも、今聞こえてきている50秒弱はピアノバラードといえる曲調であまり大音量アピールにそぐわない。寧ろ静かにしっとりと聴いて欲しいパートであるように思われる。となると、そう、フルコーラスを聴いてみると全く異なる派手に盛り上がるパートが出てきて、音量のコントラストの激しい、大音量が似つかわしい壮大な演出が待っているのだとみることもできる。つまり『桜流し』みたいなダイナミックな構成になっているかもしれない訳だ。

「キングダム」「キングダム 遙かなる大地へ」の2本を観て劇伴音楽が非常に強力であることを痛感した。正直、これならエンドロールはサウンドトラックのダイジェストがベストだと思った。主題歌はあクマで劇場外での宣伝が役割であって、映画の中での役割はそんなに期待されていない、そんな起用方法だった。ワンオクとミスチルの名誉の為に付け加えると、両バンドともしっかり「キングダム」の世界観を踏襲した歌を提供していて、「そばかす」みたいなことには全然なっていなかったのでそこは強調しておきたい。

映画制作側の戦略次第だ。作品性最優先でサントラを使うか、興行成績の為に有名歌手を起用するか。起用される歌手の方もクリエイターだから、相手方の世界観にばかり寄せさせられるのはやりづらい。ある程度自由にさせて貰える方がいい、という事情もあったりする。ヒカルさんが今回そういった前2作を踏まえての制作側からのアプローチに対してどういう返答をしたか。この『ぜひ大音量で』にはそこのところのヒントが隠されているように思う。

ヒカルさんいざとなったらかなり大胆だからねタイアップ・ソングに関しては。代表的なのがフジテレビのドラマ「HERO」への提供曲で、服部隆之によるブラスバリバリの華やか極まりないテーマソングで勢いよく本編がエンディングを迎える中しっとりアコギのイントロからマイナーコード切ないメロディをフィーチャーして歌われたのが『Can You Keep A Secret?』だった。第1話をテレビで観たときその余りの落差に苦笑いしたことも懐かしい。ヒカルらしいなと思ったし同曲は2001年年間第1位を獲得した宇多田史上屈指の大ヒット曲となったのでその大胆さで大正解だったのだが、斯様にヒカルはサントラに対しても様々なアプローチが取れるんだな。

なので今回の『ぜひ大音量で』も、作品とそのサントラに寄り添ったからこそなのか、或いは書きたい曲を書いた結果なのか、まだ見極めは容易ではない。でも、短いコメントだからこそ言い間違いとかでは全然有り得ないわけだから、いつか答はもたらされるだろう。答が到着するのを手薬煉引いて待ち構えていたいと思いますです、ハイ。