無意識日記々

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Gold TV歌唱比較

あーもー。このネタ、「まつもtoなかい」の動画が上がってる間に投下したかったんだけどなー。時機を逸したわ。

というわけで、今夏の宇多田ヒカル『Gold ~また逢う日まで~』のTVパフォーマンス、

2023/7/31「CDTV LIVE! LIVE!」@TBS

2023/8/12「ライブ・エール」@NHK

2023/8/20「まつもtoなかい」@CX

の3回をそれぞれに比較してみますよ。正直申しまして、昔に較べてヒカルの安定感が格段に上がってる上に何れも生放送ではなく収録なので、それぞれの歌唱の差異は殆ど無く、かなり無理矢理にこじ開けながら違いをピックアップしないといけない。そこはかなり「穿ち過ぎ」である事を予めわかっておいて欲しい。この人もまた「喉からCD音源」が可能な人なのです。

さてまずはTBSでの歌唱について。その特徴は「鼻声」だった。僅かではあるが鼻詰まり気味なのよねこの時。なので、全体的に鼻から抜ける空気の量が物足りず、特に「マ行」「ナ行」「ラ行」の子音m、n、rの発音にキレが足りない。わかりやすいのが

『プラチナもダイヤモンドも

 アンドロメダも勝負にならぬ』

のパートで、『ナも』『モンドも』『メダも』『ならぬ』とmとnの子音のオンパレード。故に本来ここで畳み掛けるべきなのにTBSではほんの僅かに迫力に欠けていた。実に惜しかったです。

NHKでの歌唱の特徴は「走り気味」。これまたほんの僅かではあるが、他での歌唱に較べてアタマのアタックを気持ちツッコみがちに歌っている。といっても、リズムからハズレている訳ではなくホントに「気持ち」程度。TBSで少しもったりした歌唱になったのでそこを挽回しようと意識したのかもしれない。これまた

『プラチナもダイヤモンドも

 アンドロメダも勝負にならぬ』

のパートを聴くと、『も』の語尾が僅かに次の『ダ』や『ア』に引っ張られているような感覚を覚える。もう錯覚と言われても納得なくらいにほんの僅かになんだけどね。

そしてCXでの歌唱の特徴は「ジャスト」。TBSでややもっさり、NHKでややツッコミだったのが、ここではいちばん歯切れよく「ちょうどいい」リズム感で歌われている。くだんの

『プラチナもダイヤモンドも

 アンドロメダも勝負にならぬ』

のパートがここでもやはりわかりやすく、子音・母音ともにもたらず流れず、クッキリハッキリ発音されていてとても見通しがよかった。

以上の点を踏まえると、放送順がそのまま収録順だったのかなと思わされるが、はてさてホントのところはどうなんでしょうね?

…で。となるとじゃあ、今回のTV出演の出来は

CX > NHK > TBS

だったってことでいいの?と言われそうだけど、話はそう簡単ではないのでした。

前にこの歌のハイライトはラスト前の

『you are』×8

のパートだと書いた事があったかと思うけど、ここってスタジオ・バージョンからして『are』の歌い分けが素晴らしいんですよ。その8回分の『are』の歌い分け方を模式的に書き下すと、

① はわ ②はわ ③はわわ ④はわわわ

⑤ はわぁ ⑥ はわぁ ⑦ はわわわぁ ⑧ はわわわわぁ

みたいな感じなんすよ。あれやね、『Beautiful World・ (Da Capo Version)』の「『Love』歌い分け七変化」みたいな感じやね。

そいで、ここの①~⑧の歌い分け、CXではほんのちょびっとだけうまくいってないんすよ。たぶん、①の出だしがイメージ通りにいかなかったんじゃないかな。もちろん、音程もリズムも全くハズしてないんだけど、③から④へ、⑦から⑧へと歌うときに「より儚げに」変化させる変化量がスタジオ・バージョンに較べて物足りないのだ。他方、TBSでの歌唱は寧ろスタジオ・バージョン以上に歌い分けの落差が大きく、『are』の発音が儚く空に溶けていく感じが最もよく表されていた。故に私の、この『you are』×8のパートに関する評価は

TBS > NHK > CX

になるんですよ、えぇ。

以上2点、「子音の歯切れの良さ」と「areの儚さ」の両方の出来栄えを鑑みると、

「いずれの歌唱も甲乙つけがたい」

というのが私の結論になります。いずれも一長一短、その日の気分で好みが変わるやつでした。

だけど、繰り返しになりますが、これってどれもこれも「ほんのちょっとの違い」を顕微鏡で拡大して無理矢理に論じたようなものだから、私がブラインドでこの3つをランダムに再生されたら多分どれがどれだか区別がつかないと思う。それくらいヒカルの歌唱には安定感がありましたですよ。いやはや、凄い歌手だねこの人は。やっぱりとんでもなく歌が上手いんですね。ならばいつものシメ台詞を書いとくか。

宇多田ヒカルが歌が上手いのを疑うまい!」

(うただひかるが うたがうまいのを うたがうまい!)

…おあとがよろしいようで!