無意識日記々

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セトリ決めは複雑怪奇なパズルみたい

ライブでの『traveling』の立ち位置が危うい、という話をしたが、それは最近曲である『Gold ~また逢う日まで~』についても言える事だ。ヒカルがインタビューで語っていた通り、この曲は本来ストレートなダンスチューンであった所を映画のエンディングに合わせるために前半をバラードにしたものなので、これをライブでやるとなったら全編アップテンポにしたくなるのが人情というもの。恐らく、結果的に『Taku's ~ Remix』に近いものとなるだろうね。

しかし、そんな事をしたらますますライブがアッパーなダンスチューンばかりになってしまう。ただでさえ宇多田ヒカルのコンサートといえば昔から「立って騒ぐか座って観るか、それが問題だ」と言われてきているのに加え、昔からのファンは当然のことながら高齢化しているのだ。とても体力がついていかないよという人も多いのであるまいか。

ではその『Gold~』は逆に全編バラードにライブアレンジすることにして…そう、『WILD LIFE』での『Hymne à l'amour 〜愛のアンセム〜』のように、スタジオ・バージョンではアップテンポだったものをライブでスロウダウンさせるケースも結構あるもんな。『COLORS』や『Letters』なんかもそうだったよね。

でもな~それをやって異たら、いつまで経っても『FINAL DISTANCE』や『Flavor Of Life - Ballad Version -』ばかりを歌うことになって、いつまで経っても『DISTANCE』や『Flavor Of Life』(オリジナル・バージョン)を披露するターンが回ってこないのよね。キラーダンスチューンが増えすぎたのよな…いやだって、本来ならライブの定番曲になって然るべき『One Night Magic』や『Celebrate』がまだ一度もナマで歌われてないからね…なんちゅう贅沢なアーティストなんや…。

これらの問題をあっさり解決するのは、前回も触れた通りライブの頻度をあげればいい。「今回は聴けなかったけど、次の機会に歌ってくれればいいや」と思って貰えるならいろんな曲をその都度歌える。しかし、現実の宇多田ヒカルのコンサートはといえば、「次当選するかどうかわからないし、そもそも次がいつになるのか見当もつかない! これが最初で最後のコンサートかもしれない!」と意気込まれるのが定番化しているのだ。MCで口を開く度に「ここに来るのは12年振り」とか言われたらそりゃそうなる。仰る通り「赤子が小学6年生になる」だけの時間ずっと待つのはなかなかに難しい。しかも、待っていたからといって本当に次があるかどうかわからないのだ。実際、ヒカル自身もう人前に出る仕事は無理だと思っていた時期もあったのだし、それはリアルな、現実的な可能性なのである。だからお互いに「一期一会を逃してなるものか!」と気合いが入る。至って自然な事だろう。

だがそれがセットリストの苦難を招いているのだから話は難しいのよね。ステージに立つのが無理な状態から奇跡の復帰を見せた人にもっと頑張れとか言うのは流石の私でも厳しいと思うしな。

そうねぇ、例えば、会場を選ぶかとは思うが、2daysの1日目を「スタンディング・ナイト」、2日目を「リラックス・ナイト」とでも銘打って、同じ曲でも1日目はアップテンポで、2日目はスロウダウンして聴かせるとか、そんな企画もアリかな? …これ、バックのメンバーの負担がどれくらい増すのか見当もつかないけど、年齢幅が広がったファン層を考えると割と悪くないかもしれない。

勿論、アリーナタイプの会場ならスタンディング・エリアと座席エリアで分けてチケットを売ればいいのだけれど、それだとどちらも堪能度合いはそれなりになりそうで。いやその緩急硬軟のバランスこそ宇多田ヒカルの真骨頂、とも思うんだけども、ともあれ、「増え過ぎたキラーチューン問題」と「ライブの頻度が少ない問題」と「長年のファンの高齢化&若いファンの増加問題」などなど、幾つもある問題を解きながらコンサートのセットリストは決まっていくのだ。「ヒカルが出てきて元気に歌ってくれるんなら曲は何でも!」というのは基本にあるものの、多様なニーズにどう応えていくのか、その手腕の程が楽しみなのもまた間違いのないところなのでした。まる。