無意識日記々

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ツアー中サイレント・マジョリティの皆さんと。

ツアーの告知があれば当然ながらファンの間ではコンサートの話題で持ちきりに…なっているのは実際には一部の話。普段から宇多田ヒカルを聴いてるリスナーの中でもそれはかなり偏った熱心な層である。大半のリスナーは、たった2時間のために2万も3万も払おうとは思ってないと思うのだ。

そもそも、生歌生演奏にそこまでの価値があるものか?と疑義を呈する人は昔から多い。歌手本人の当日のコンディションから始まって、各会場の音響や気象条件、周りの観客との鑑賞スタイルの差異など、不確定要素は実に多い。これがクラシックのコンサートなら歌も演奏も本物の生音が聴けるのだからどんなハイレゾサウンドよりも高音質が保証されているので高い金を払う価値も見出せるのだが、ポップスのコンサートはPAを挟んでの間接的な生演奏。慣れない大音量で何やってるかさっぱりわからない、という事もよくある訳だ。

今回は何より6年前と比べてチケット代金の高騰が著しく、このお値段を見て元々行ってみるつもりだったけどやっぱ辞めたという人も結構居るんじゃないかい? 数十年前は「何回となく聴き返せるCDが3000円で、一度きりしか聞けないコンサートがその倍の6000円だなんて割に合わない」とかなんとかよく言われたものだが、今やサブスク毎月1000円で何回となくどころか何億曲も聴き放題なのである。今回のプレミアムチケット代27500円があればApple Musicを2年半以上利用できる。30ヶ月だから22000時間とかか。コンサートが2時間とかなら正に10000倍以上の時間、音楽が聴けるのだ。文字通り桁が違う。単純計算が過ぎるとはいえ、ね。Apple Musicではドルビーアトモス音源もハイレゾ音源も追加料金無しだから、単にいい音で音楽を聴きたい人は、わざわざコンサート会場に足を運ぶよりおうちのスピーカーやヘッドフォンでサブスクのハイレゾ聴いてる方がずっといい。スタジオ音源なら高い声も澱みなく出てるしハウリングも起こらないし気の合わないヤジや声援が飛ぶ事もないのだ。

それでも、それだけのことがあってもなおライブ・コンサートは人を惑わせている。惑わされている方は、それがかなりの異常事態なのだと認識しておいた方がいい。遠征して連泊してプレミアム買ってなんてお金を使うとするともしかしたらあなたの寿命を一ヶ月分とか削ってるかもしれないんだから。

勿論、私も惑わされ続けている今やいろいろと麻痺し切っている。たった今「10万円出せば100%チケットをご用意できますよ」とか言われたら一も二もなく払っちゃうもんね。ダフ屋に騙されるのはこういう人たちよね。まったくやれやれなんだけど、たまにはふと立ち止まって、「本当にこんなに手間ひまお金をかけてまでこのツアーのコンサートチケットを追い求め続ける意味はあるのだろうか?」と自問自答してみる事を忘れない方がいいんじゃないかな。

ファンの在り方、リスナーのスタンスは人それぞれ。「宇多田ヒカル、スタジオ音源は素晴らしいけどコンサートで観る事には興味が無い。」という層も一定数居る。でもツアーの応募期間である今の時期そんな人はわざわざあれやこれやと発言をしないよね。大人なら敢えて水を差すようなことは言わないわさ。

だから今はその人たちはサイレント・マジョリティとして、チケット狂騒曲を見守って、或いは無視しているかと思われる。だが、間も無く発表されていく宇多田ヒカルの新曲たちを心待ちにしているという点では間違いなく同志たちであろう。そこらへん、ほどよい距離感と自律心でお互いうまく付き合っていけたらいいなと何となく考える立春前の深夜の私でありましたとさ。