無意識日記々

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チグハグで今のヒカルが過去をハグ


3月最後の水曜日。つまり宇多田ヒカル初のベストアルバム『SCIENCE FICTION』発売日まで後2週間だ。


当初はベスト盤発売に関してはやや「ツアーのシリアルコード封入」に価値を置かれていた気がするが、ここにきてのプロモーション攻勢で、少しずつではあるもののベストアルバムの作品としての魅力が浸透してきたかなと思われる。


3月12日のチケット当落から1ヶ月でベスト盤、というスケジュールの中でその半分が過ぎた。特にエポックメイキングなのは『Automatic (2024 Mix)』の好評だろうか。新曲3曲だけならわざわざベスト盤全体を聴かなくてもそこだけ聴く、或いは配信を買うだけでよかったかもしれないが、リミックスが魅力的となるとアルバムの約半分である。こうなったらアルバム全体を買うべきか…?となってくるわな。


2024 Mix の特徴は、第一印象で随分新鮮な、新しいサウンドになった!と思わせてるのに、よくよく聴いてみると変わってないところ。特に、ヴォーカルは耳あたりは随分と新鮮なのに1998年と同じテイクなのだよな。


既にベストアルバムの曲順に合わせて、続けて『君に夢中』を聴いてみた人もいらっしゃるたろう。オリジナルのフェイドアウトに較べて非常に鮮烈になったカットアウトのエンディングから、『君に夢中』のピアノが始まる流れの良さと共に、ヒカルのヴォーカルが断絶なくスムーズに耳に入ってくる事に驚いたのではないかな。或いは、余りに自然に繋げて聴けてしまったので特にそこに引っ掛からなかった、というのでも似たようなものか。『君に夢中』は、リマスターはされるだろうが基本2021年発表の音源のままだから、23年越しの歌声がシームレスに繋がってるというのは、いやはやスティーヴ・フィッツモーリスのおっさん、やりおるなぁと唸らずにはいられない。


恐らく、あたしゃ遭遇してないが、2024 Mixはラジオで突然流れてきても「あれ?なんか違うぞ?」と思わせてくれそうだし、と同時に、アルバムの中で新しい曲たちと混じり合っても不自然に聞こえないようになってもいて、つまり、シングル曲としてもアルバム曲としても最適になるようにリミックスされているわけだ。見事なものよ。


なるほど、であれば、最初は不可解だった『SCIENCE FICTION』の曲順の意図も少しずつ見えてくる。2010年以降の楽曲のリミックスと2016年以降の楽曲を交互に聴かせるランニング・オーダーは、そんなことをしてもアルバムはチグハグにはならないぞという自信の顕われだったということか。そうやって激しくタイムスリップを繰り返しながら、全体として貫かれる「宇多田ヒカルらしさ」を、アルバムをひとつのまとまった作品として提示する事で表現したといったところか。うむ、ますます『SCIENCE FICTION』のリリースが楽しみになってきた。─ そう思う人が、後2週間で更に激増していく予感が、するわよねぇ。