無意識日記々

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レコード会社の存在意義

美空ひばりの10万円50枚BOXセットが出るときいて思わず「そんなの買う人居るんだねぇ」と呟いてしまったのだが、当然ながら宇多田ヒカル名義でそんなリリースがあれば買ってしまう訳でこちらも同じ穴の狢である。

先日言及したThe Beatlesとは規模が違うとはいえ、死後もレコード会社を潤し続けるとは全く凄いアーティストパワーであるとしかいいようがない。

ダウンロード時代になってレコード会社の存在意義、存在形態のありようが問われるようになった。が、私の見解としてはあまり役割自体は変わっていないし、変わる必要もないのではないかと思っている。

レコード会社の役割というのは、マテリアルの流通もあるにはあるものの、一番重要なのは情報の流通である。幾らインターネットの恩恵で誰しも世界中に音源を発信できるようになったとはいえ、自分の好みにしたがって情報の大海を泳いで音楽を見つけれるのはほんの一握りのマニアだけだ。「次に何を聴けばいいか」を包括的に提示してくれる存在として、レコード会社の役割は欠かせないだろう。

それに伴って、もうひとつレコード会社に重要な役割がある。収益の再分配である。ご存知のように、収益の中でレコード会社の取り分は圧倒的に大きい。作者や演奏者にまわる分はずっと少ない。これによって何が出来るかというと、大多数の小規模収益アーティストを、ほんの少数の大規模収益アーティストが支える構図が出来上がるのだ。

レコードの売上というものは、百花繚乱なアーティストがそれぞれに収益をあげている、というよりは極一部のビッグアーティストが大半の収益をあげるものだ。宇多田ヒカルがどん!と売り上げてレコード会社が潤い(その昔EMIはFirstLoveの収益でビルを建てた、なんて噂もあった位だ)、そのお金で他のアーティスト、とりわけ次世代を担うと期待されている現時点では未熟なアーティストを育てる事ができる。そういうサイクルが完成するのだ。

これが、レコード会社なしで宇多田ヒカルが全ての収益を独占していたら、他のアーティストたちはその恩恵を受けれない。レコード会社という機構があって初めて、"レコード業界"という枠組みが出来上がっているといっていい。業界全体の維持発展の為には、こういった機構が必要不可欠なのである。

尤も、これはあクマで理想論であって、レコード会社が自らの使命を全うしているかどうかは、各自で判断するべきだろう。

そう考えると、そのほんの少数のビッグアーティストであるヒカルの復帰を本当に待ちわびるべきなのは、これからデビューしようとする若いミュージシャンたちかもしれない。こういう観点からタイミングをはかるのも、大事だと思うよ〜。