無意識日記々

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風薫る軽快なドラミング

Wild Lifeのサウンドを大きく左右しているのは、以前述べた通り阿部薫のドラミングである。特にBLUEの重苦しい世界観に涼やかさを運んだ軽快なグルーヴは特筆に値する。

具体的にどこらへんであのスウィングし過ぎない、かといって躍動感も失わない絶妙なバランスが生まれているのだろうか。

ヒカルのバンドのドラマーといえば、極端なまでにタイム感の正確な印象がある。ビートにコレクトにアジャストしてくるスタイルが基本にあるのが伝統だったのだが、阿部の場合そこまでコレクトでタイトでもない。それでいてルーズにもならない。何故だろう。

私は太鼓の事は何もわからない素人なので想像で書くと。特にバスドラとタムのチューニングバランスが個性的な感じがする。バスドラの音色はさほどボトムを効かせておらず、少しばかり緩めな感じでそれでいてキック自体は深追いしない。その割に音像が曖昧にならないサウンドで、パタパタとバタバタのちょうど中間くらいの音を作り上げている。

どの楽曲でもアクセントと山場を作り出すタムロールのサウンドは、バスドラとは対照的に非常にボトムが効いている。サウンド自体は重厚だが流れるような手捌きで華麗なロールを次々と決めてゆく。特にBLUEはスタジオバージョンのリズムパターンがシンプルだっただけに彼のドラムフィルでまるで生まれ変わったような爽快さが生まれている。

手捌きというより指捌きかもしれない。ひとつひとつのヒットを正確に、或いは味わい深く叩き込むというより全体的な流れを重視した一音々々のニュアンス。Passion以降のロックパート、特にギターサウンドが薄くなったShow Me Loveでは八面六ぴの活躍であった。

ジャズのようなスウィング感、という程スノッブな空気を漂わす訳でもなく、かといってガチガチのハードロックでもない、フュージョンジャズロックとロックンロールから当距離にあるような個性的なバランス。ヒカルの歌が基本的に濃厚な為彼のサウンドの個性との補い合いが実に巧く機能していた。

一方、バラード曲においてはどことなく気がないというか、流れを重視するタイプとしては一音々々をじっくり叩くスタイルには興味がなかったのか、バラードというより"そのテンポの曲"を叩いている感じで、些か物足りなかった。

のだが、そのお陰でというか怪我の功名というべきか、バラードのFlavor Of LifeからアップテンポのBeautiful Worldへの繋ぎがことにスムーズで、グルーヴの切り替えがないのも悪くないな、と思わせた。

他にも、Stay Goldの生まれ変わりっぷりやAutomaticのアレンジなど特筆すべき点はまだまだあるが、それはまた個別に書くとしよう。

これだけサウンドが異なると、やっぱり音源のみ、つまりライブCDが欲しくなってくる。特にBlurayリッピングが困難なのだから、例えばライブCDとBlurayの同梱版にでもして将来再発してくれないかなぁと要望したくなる。まぁそれは過去のライブビデオ総てにいえる事だけどね。配信のみでも何とかならないものかなぁ。

勿論その前にIn The Fleshですが。特にStay Goldなどでリズムセクションの違いを聴き較べたら面白いはずなのである。阿部薫の存在感が如実にわかるだろう。