無意識日記々

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華麗なる卓袱台返し

『あなたに教える理由を教えて』―"Give me a reason to show you"の1つの訳し方として前回(いつだよ)提示した一文だが、この歌のサビにはもう1つ英文がある。"Give me a reason to love you"―末尾が"love you"になっている方だ。

これを、「あなたを愛する理由を教えて」と訳すと、何となくひっかかる感じがひとつある。また、giveを教えると訳さずに、違う言い方、「あなたを愛する理由をちょうだい」くらいになると、まるで意味が変わってきてしまう。これではまるで、現状あなたを愛していないみたい。しかし、一文だけの訳としては別に間違っちゃあいない。

ここらへんの微妙さをヒカルがどう切り抜けているかというと、周りを固める事で凌ぎきっている。『すべての法則うらぎってみせる たとえそれが運命でも』

ここで法則とか運命が(後から)出てくる事で、実はreasonという単語がそういった意味―即ち「世の理(ことわり)」の事を言っているのだと示唆しているのだ。「なんでまたあたしゃあんたみたいなのを好きになっちまったのかねぇ!? それが世界の仕組みってもんかな!はは!」みたいなノリだと思ってもらえれば。reasonはこの「なんで」の部分である。

「これから愛する為の理由」と「既に愛してしまっている理由」。同じ一文でも、正反対といえる解釈が出来てしまう。ここを取り違えたら…と今の今まで思ってたけど、これどっちでもいいな。(華麗なる卓袱台返し)

確かに、ここから先の二番の歌詞を聴くと、「あなた」に上回られ翻弄される様が描いてあるが、この"まとわりつき方"は、別にまだ愛していなくても出来る訳か。なるほど。あれやこれやを経て漸く辿り着いた先で、そこで初めて"あなたを愛する"ようになったとしても構わないな。うむ。

聴き慣れた歌も、注意深く聴き直してみると新たな発見があるものである。もう15年も前の歌なのに! 何年経っても、15,6歳の小娘に翻弄され続ける私でしたとさ。やれやれ。