無意識日記々

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早く『君に夢中』に夢中になりたい

金曜日に「最愛」の第1回放送があり無事最新曲『君に夢中』が劇中に流れた。そう、劇中に。エンディングで流れると思ってたあたしはおっかな吃驚。先週あたしが書いたことをそのまま受け容れて23時跨いでテレビつけた方がいらしてたら誠に申し訳なかった。

挿入歌としてオンエアされていた為、大半の歌詞が台詞に埋もれて聞き取りづらい中もうYouTubeには幾つも耳コピカバーが投稿されていて凄いなぁと思いつつ、これで曲の話をされるのヒカルは不本意じゃないのかなぁとも気に掛かる。一応、『君に夢中〜』と歌う所では心做しか歌の音量を上げてくれていた気がするので最大限の配慮はしてくれてたし、聞き取れないながらも歌詞とドラマの場面の適合感も考えられていたようには捉えられたが、でもやっぱりエンドロールでじっくり聴かせて貰いたかったというのが本音ですわ。ドラマに没頭してる人に歌は耳に入らないだろうし、歌を目指して来ていた人にはドラマの流れが途切れただろうし、お互いに余り得をしていないように思う。時間帯としてザッピングタイムで毎分視聴率狙いだったようにも思うが、ドラマの性質上途中から観てもそんなに面白いとは思えない気もしなくもない。まぁそこらへんは現代の地上波テレビ事情に疎いあたしが何か言うことでもないかな。

という訳で本来なら曲の感想や評価は一旦保留にしときたいとこなんだけども、それでも聞こえてきたヒカルの歌声がとても優しくて優しくてうるうる来てしまってね。やっぱり凄いなぁと。昔からヒカルの歌声はたとえAMラジオの素朴な音質であっても浮き上がってくる強さがあるとは言ってきたが、ドラマのセリフに埋もれる中であってもその強さは発揮されていた。単にこちらのヒカルボイスセンサーが敏感なだけかもしれませんが。

そして、優しい。『PINK BLOOD』を最初に聴いた時にもまず思ったが、歌からすぐにヒカルの優しさが伝わってくるというのが何よりもの第一印象だった。なんだろう、優しく歌おうとか優しさを表現しようとか、そういうところからの技巧では最早無く、そもそもの歌との向き合い方自体が優しいというかね。なので、ヒカルがデビュー時から、いやさデビュー前から持ち合わせている圧倒的な切なさは今も変わらずそのまま持ち続けていて、それで尚且つ心にじんわりと染み入る優しさを湛えているものだから、声の力というのはこうやって年輪を重ねられるのだなと22年の歩みを感慨深くも想えたり。これが更に今後も続くんだろうな。

そして『君に夢中』の曲調だが、『Stay Gold』を思わせるピアノの調べから入るスロウ〜ミッドな逸品で、尚且つその『Stay Gold』のスタジオバージョンにはなかったベースサウンドが結構な幅を利かせている。編曲のバランスは、よって、すぐさま『Find Love』を思わせ、アルバム収録時にはこの二曲が隣り合わせになるかなというイメージも沸く。

一方で切々と歌うヴォーカル・ラインはなお突き抜ける宇多田ヒカルの真骨頂で、全く気をてらわずにドラマ制作側の期待感に応えた哀感を提供している。特に楽曲後半の展開は……まともに聞き取れなかったけれども、ドラマが後半の切迫した状況(12月頃のオンエア?)になる頃には更に活かされるようなサウンドが展開されていた。恐らくまた劇中で使われる編集が有り得るだろう。

バラードというにはサウンドがとても凝ってはいるのだが、ヴォーカルのアプローチはそう呼んでしまって構わない。『SAKURAドロップス』を聴きながら企画を練った新井順子プロデューサーも大満足の出来だろう。ここらへんも素直に優しい。

これが大ヒット曲になるかと問われれば、この第1回の扱いではインパクトを与えづらくてなんだか出鼻をくじかれた感が強い。そこまで話題になるかなぁというのが正直なところだ。『Stay Gold』はリリース当時10代くらいのリスナーに好評だったが、今回のドラマタイアップの想定視聴者層は50代辺りだろうから少しミスマッチも出るかもしれない。そういった評判の諸々は、フルコーラスがリリースされてからの動向を見た方がよさそうだね。