先週からの続きで『Devil Inside』の歌詞のお話。今回はサビ。
『悪魔(あるいはそれに似た何か)が中に潜んでいるのかも
悪魔(あるいはそれに似た何か)が私の中に潜んでいるのかも
悪魔(あるいはそれに似た何か)が中に
私の心のどこかずっと奥底に悪魔が潜んでいるのかも
私の中の悪魔
私の心の奥底に潜む嫉妬深い天使』
ちょっと煩雑なので一旦括弧書きを省略してみる。
『悪魔が中に潜んでいるのかも
悪魔が私の中に潜んでいるのかも
悪魔が中に
私の心のどこかずっと奥底に悪魔が潜んでいるのかも
私の中の悪魔
私の心の奥底に潜む嫉妬深い天使』
これで少しばかりスッキリしたかな。
でもここでのキモは、その省略した部分にあったりする。『(あるいはそれに似た何か)』即ち「悪魔っぽい何か」。シンプルに日本語で言えば「魔性」ってヤツになる。「魔性の女」っていう言い回しに出てくる魔性ね。goo辞書を引くとこうある。
「魔性:悪魔のような、人を惑わす性質。」
長いファンはピンと来たかもしれない。そう、昔のヒカルのプロフィールには
「特技:惑わすこと」
とハッキリ書いてあったのだ。元々ヒカルの持っている魔性の性質を、ここでは『私の中の悪魔』=『Devil Inside』と称している訳である。みんなにいい子ちゃんにみられてる女の子が内に秘めるそんな危うい感情。当時21歳だった事を慮ると「小悪魔的」とでも形容していいかとも思うが同時に人妻でもあったからここは評価が別れるか?(…どうでもいい懊悩だな)
で、「っぽい何か」という捉え方についてはサビの最後ですぐさま伏線回収されている。
『私の中の悪魔
私の心の奥底に潜む嫉妬深い天使』
そう、『私の中の悪魔』=『私の心の嫉妬深い天使』なのだ。悪魔っぽい何かは天使なのである。
ここの入れ子構造がこの歌の歌詞の主旨だ。冒頭で
『誰もが私を天使にしたがる』
と外面が天使である事を示唆しつつ
『私の中の悪魔』
と内面に魔性を持っている事を告白。しかしそこから更に心の奥底まで踏み入れると
『私の心の奥底に潜む嫉妬深い天使』
が現れてくるという
〔 天使(悪魔(天使))〕
な二重の入れ子構造。なんだか
『よいしょっと』
『よいしょっとPart2』
の連作を思い出してしまうわね。ヒカルがくまちゃんの着ぐるみを脱いだらくまちゃんがヒカルの着ぐるみを脱ぐという、二コマ漫画。
https://twilog.togetter.com/utadahikaru/date-101103/asc
恐らく、こういった「二重の入れ子構造」がヒカルの心象風景の基本なのだろう。その代表格であるこの英語詞の『Devil Inside』と同様の構造を更に発展させた日本語曲が『俺の彼女』で…という話は長くなるからまた稿を改めて、ということでひとつ宜しく御願い致します。