無意識日記々

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ツアー間隔、案外最適?


ライブ・コンサートの「ペース」というのは本当に難しい。感染症禍でそれが全世界的に崩された感が強いがそれは兎も角、どんなアーティストであれ、コンサートを何年に一回(或いは年に何回)やるかというのは、須くコンサートの内容を変容させる大きな要因になる。


宇多田ヒカルの場合、ご存知のように6年に一回のペースで全国ツアーを敢行している。本来なら2012年にも欲しかったとこだけどね。


・2000年『Bohemian Summer 2000』

・2006年『UTADA UNITED 2006』

・2012 年 人間活動期の為敢行されず

・2018年『Laughter In The Dark Tour 2018』

・2024年『SCIENCE FICTION TOUR 2024』


という具合。それぞれ、シドニー夏季五輪トリノ冬季五輪、平昌冬季五輪、パリ夏季五輪の年だね。肝心の地元ロンドン夏季五輪の時が抜けてんだな。


これくらいの間隔になると、前も触れた通り観客の最大多数は「初めて観る人」になる。そうなると、「宇多田ヒカルならまず聴きたい曲」が優先されて歌われる。『First Love』、『Automatic』、『traveling』、『COLORS』、、、等々。これが4年に一回、2年に一回、1年に一回となるとまた異なる選曲になるわけだ。年一回なら初めて来る人が最大多数派ということはなくなっていくので、「まず聴きたい曲」は「今回も聴きたい曲」と「また次回でも構わない曲」に分かれていく。「今年は聴けなかったけど来年聴けるならまぁいいか」みたいなことになる曲が出てくる。これが6年に一回ならそうはいかない。


故に、この「6年に一回」のペースは、ライブのセットリストをかなり厳しく制限する。定番曲は必ず歌わないといけない、みたいなね。


ただ、宇多田ヒカルの場合その都度新しく特大ヒット曲が更新されているので、「まず聴きたい曲」が一方的に増えてってるというのが強い。普通なら「必ず歌わないといけない定番曲」というのはやはり初期の名曲が重視されがちなのだけど、2003年の『COLORS』(年間3位)、2007年の『Flavor Of Life』(ダウンロード世界1位)、2008年の『Prisoner Of Love』(290万ユニットの売上)、2016年の『花束を君に』(紅白歌唱曲)『道』(年間3位)、2021年の『One Last Kiss』(最速一億回再生)という風に、ある意味6年に一回の全国ツアーのペースに近いペースで国民的認知度の名曲が生まれているとみることもできている。なので、実はヒカルの全国ツアーのペースは「結構ちょうどいい」という見方すら出来てしまうのだ。その時々で大看板になる特大ヒット曲を携えられているのだから。


今度の『SCIENCE FICTION TOUR 2024』で目玉となるのは、その意味でまず『One Last Kiss』になるだろう。実際、最初のツアートレイラー動画が公開された際に選曲されていたのが同曲だった。スタッフの皆さんも、そこの所は心得ているようだ。


そしてその『One Last Kiss』ははちょうど昨日EP店頭リリース3周年を迎えた訳だが、ご存知の通り同じ日がアルバム『First Love』発売25周年でもあった。公式が一切触れないとは予想外だったけれど、この2枚を並べた時に物凄い威容だなと感服したよ。「宇多田ヒカル25周年ずっと全盛期説」と「宇多田ヒカルは常に今が全盛期説」のどちらを採用すべきか贅沢にも悩んでしまった。どっちでもええか。



何が言いたかったかというと、6年に一回というペースは本来なら勘弁して欲しいくらいに疎かに過ぎるのだけど、そのコンサートの価値を最大限に高める為には最もベスト且つ“最速”なペースになっているのかもしれない、という事なのよ。つまり、どのコンサートもレア感が最高潮で、かつギリギリ全ての全国ツアーのセットリストを並べるとなんとか漏れなく宇多田ヒカルの歴史を必要最低限把握できるようになっている、という事が言えそうでな。これが12年に一回だと、レア度は上がるけどライブで歌ってない大ヒット曲がどうしても出てきてしまって画竜点睛を欠きそうで。


いや勿論、『WILD LIFE』をそこに入れないと『BLUE』も『Flavor Of Life』も『ぼくはくま』も取り落としてしまうのだけど、そこは本来2012年にやるべき全国ツアーをしなかったからね。まだヒカルは41歳になったばかりだし、ここから更に6年ごとに全国ツアーを敢行したとしても、あと3〜4回はいけるか?


そりゃ本音は毎年観たいさ。総ての曲をライブで歌って欲しい。何より、ファンは毎年、僕らが知ってる所だろうが知らない所だろうが、誰かしら死ぬからな。生きてるうちに観たかったといって願いが叶う事なくこの世を去る人が居るわけだ。鳥山明だってワンピースの正体を知る前に亡くなった!(作者から聞いてたかもしれんが) でも、そういうの言い出したらキリがないので、今回見た「コンサートを観る価値を最大限高めた中での最速のペース」というのは、ある意味ひとつの最適なやり方という風に考えてもいいのかもしれないなと。


でもなぁ。それは『観たい人が全員観れる』のが前提だからね。「今回観れなかった」人は12年、干支一回り待たされるとなったら本当に洒落にならない。6年に一回でも「本来なら勘弁して欲しい」ペースなので、今年はフェス出演や日本列島外公演も含め、なんとか観たい人が出来るだけ観れる日程に、最終的に落ち着いて欲しい。でも真夏の屋外はヒカルの負担が大きいから避けて欲しい…とか言い始めたらまたもやキリがないんだけどね!


今回の話は「ただの結果論」でしかない。ヒカルの本音はもしかしたら『Utada In The Flesh 2010』みたいなツアーをまたやりたい、あたりかもしれんしな。まだまだ今回はヒカルの「今年のツアーへの意気込みと抱負」が聞けてないので、それが判明したらまたこのテーマで考え直しますわね。