無意識日記々

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said/もう言った後だから

『もう知ってるから』が『I already know it is』、

『もう言ってるから』が『I already said it is』、

とそれぞれ訳されたのもまた有益な情報だ。というのも、最初に聴いた時に「誰がもう言ってるの?」と疑問に思えたからだ。I、私だったのね。

『誰にも聞かなくても

 キレイなものはキレイ

 もう言ってるから』

この、『誰にも聞かなくても』という一節はリスナーに「その点について聞く人は疑問を抱いているのだろう」と想像させる。誰かに聞こうかなという案が生じる以上、その人はなんらかの疑問質問の答を求めているのだろう、と。だとすると、『もう言ってる』人がそこに居たとすれば、それは「その人」(即ち「私」)ではないよね、という類推が暗黙のうちにはたらく。しかし歌には「私」以外が居る気配が無い。これは一体どういうことなんだ?と。

この部分の英訳を改めてみてみよう。

『I don't need to ask anyone

 For something beautiful to be beautiful;

 I already said it is』

前回触れた前段落のを併せると、

『show/見せる』&『know/知ってる』

『ask/聞く』&『said/言ってる(』

というそれぞれのペアリングが成立している。showとknowの韻の踏み方からしてやっぱり『PINK BLOOD』 には英語版が存在するのでは、と勘繰ってしまうが取り敢えず訳詞のままだと尺は怪しい。それはさておき。

『I already SAID it is』という訳し方によって『もう言ってるから』は「既に言った後だから」という意味に落ち着いた。まぁそれ以外の解釈は難しかったんだけど、だったら「もう言った(んだ)から」みたいな歌詞でもよかったのにね、とも思える。いやま、『知ってるから』と韻を揃える為だったんでしょうな。

ここも少し補足説明を入れた方がわかりやすいかもしれない。言ったからどうだっていうんだ?という釈然としない気持ちがリスナーに残るからだ。

ここでは、『I already said it is』を具体的に想像する事が必要になる。

例えば貴方がドレス姿のヒカルパイセンをみて思わず「うわ、キレイ…」と言ったとしよう。それがもう「既に言った後」なのだ。キレイなものに見蕩れていつのまにか口をついて出た「うわ、キレイ…」という一言。それに対して、その時に周りの人を捕まえて「ね、ね、今のキレイだったよね??」と訊いて回る必要はないですよとこの歌は言っているのだ。あなたが思わず言った一言は真実なんだし、だからあなたはその一言に責任を取りましょう…というか、もう心中しちゃいなよ、と。

つまり、『もう言ってるから』というのを「心の中で」の事も含めて捉えるとわかりにくくなる。ここは純粋に「言う/say」という“行動”を取ったとだけ解釈すればいい。、、、いや、解釈ですらないな。「心の中で言う」という自然な派生を取り敢えず引っ込めて『言ってる』という言葉をありのままに受け止めようということだ。そう読み解けばこの

『誰にも聞かなくても

 キレイなものはキレイ

 もう言ってるから』

が従前より少し自然に響いてくるのではないだろうか。