『Face My Fears (English Version)』に関しては、サウンドのみならず歌詞もヒカルとSkrillexとPooh Bearの共作だったようだ。ヒカルがオリジナル・アルバム収録曲で他人の歌詞を歌うのは珍しい。
さて、ではどこらへんがヒカルの作詞で、どこらへんが他の二人の歌詞なのか? 今までは英語の歌詞しかなかったのでなかなか分析しづらかったが、今はNetflixの日本語訳字幕があるので、これを手掛かりにして何かわからないだろうか?
まず、いきなり歌い出しから怪しいんだよね。
『Breath, should I take a deep?
Faith, should I take a leap?
Taste, what a bitter sweet
All my, all my life』
ここの訳し方がこうなのだ。
『してみようか、深呼吸
飛び立ってみようか、思い切って
ああ、なんとほろ苦く切ない
ずっと、これまでずっと』
普段のヒカルの作詞にはみられない大仰で詠嘆的な口調を連発している。唯一、4行目の『ずっと、これまでずっと』はヒカルっぽいかな。でも、いつもだったら「ああ、なんと」とは言わないよねぇ。
一方、2番の同じメロディのところは少々趣が違う。
『Lose, don't have nothing to
Space, this is what I choose
A mile, could I walk in my shoes?
All your, all your life』
ここをヒカルはこう訳す。
『何もない、失うものは
空間、これは私の選んだこと
1マイル、私の靴で歩ける?
ずっと、これからずっと』
倒置法はそのまま活かされてるが、『これは私の選んだ事』や『私の靴で歩ける?』の親密な口調はいつものヒカルを連想させる。ここを1番の『ああなんとほろ苦く切ない』と同じ調子で訳すなら「そなたは私の靴で1マイルを歩けるか?」みたいになりそうなとこだが、そうはなっていない。これは、ここが元々ヒカルの作詞だからではないだろうか?
そう思わせるもう1つの理由が、今度は『Face My Fears (Japanese Version』、日本語版の方に見出せる。
『(ねえ)生まれつき
(ねえ)臆病な人なんていない
初めてのように歩きたい』
2番の同じメロディの箇所だ。日本語版は、他の2人が日本語を解さない以上100%ヒカルの歌詞である。ここの『初めてのように歩きたい』は、英語版の『1マイル、私の靴で歩ける?』への返答、応答であるように思える。ちょうど『光』の『家族にも紹介するよ』に対する『Simple And Clean』の「だからって君のお父さんに会わなくちゃいけないのかな?」のように。自分で書いた英語歌詞だから、日本語歌詞でそのアンサーを記したと、そうはならないだろうか?
…今回の推理が妥当かどうかはわからない。結構自信が無い(笑)。なので、皆さんも、『Face My Fears』の英語版と日本語版と日本語訳をそれぞれ見較べ聴き較べながら、英語版のどこがヒカルの歌詞でどこがそうじゃないのか、ちぃと考えてみては如何でしょーか。結構、楽しいよ。わかるかどうかはさておき!