無意識日記々

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努める

さて続いてのセンテンス。

『Whenever you need me

 I'm gonna try to make it through to you

 But I'm not always ready to』

G:あなたが私を必要とするときはいつでも 私はそれをあなたに伝えようとするつもりです しかし、私は常に準備ができているわけではありません

D:あなたが私を必要とするときはいつでも 私はあなたのためにそれを作るつもりです しかし、私はいつも準備ができていない

S:私を必要としている時は いつでもあなたの元へ駆けつけるようにする 常に用意万端というわけではないけど

U:あなたが私を必要とする時は

いつでもあなたの元へ 駆けつけるように努める でも常に用意万端ってわけじゃない

Dが珍しく初歩的な誤訳をしているね。『But I'm not always ready to』のnotはalwaysに掛かってるから「いつも出来ない(0%)」じゃなくて「いつもという訳ではない(100%未満)」という意味だわね。こういうこともあるのね。

で、だ。このセンテンスを普通に訳すときに悩ましいのは"make it through to you"の部分で、Gでは「それをあなたに伝える」、Dでは「あなたのためにそれを作る」になってるけどこの場合の正解はSとUの「あなたのもとにか駆けつける」。"make it through"が「困難を潜り抜けて成し遂げる」みたいなイメージなので、何か障害があっても"to you"、潜り抜けてあなたの所に辿り着く、って感じ。なかなかに情熱的な歌詞なのだここは。

で本題。Sではそこで「駆けつけるようにする」になっていた所を今回Uでは「駆けつけるように努める」に変わっている。ささやかだけどここの気持ちの揺り幅は見過ごせない。「駆けつけるようにする」というのは、駆けつけるもつけないも自分の意志で決められる人がそう決めているように思われてしまいかねないけど、「努める」が入ることで、「私はそうしたいけど、なかなか難しいこともあるんだ」というニュアンスになる。要は"try"という言葉を強調したかったんだな。私はあなたの力になりたい、でも力が及ばないことがあることもわかって欲しい、だから次に『I'm not always ready to』、常に用意万端って訳じゃない、って歌うのよね。

今回ここをどうしても取り上げたかったのは、18年経った今、ヒカルは

『わかんないけど

 君のこと 絶対守りたい』

って力強く歌い切ってるから。『BADモード』でね。

『今よりも良い状況を

 想像できない日も私がいるよ』

駆けつけるどころの話じゃないよね。絶対傍に居てあげるっていう強い意志と自信を感じるよ。

38,9歳の今振り返って21歳の頃の『About Me』の歌詞を訳すにあたって、「この頃は心細いながらも頑張ってたもんね」ってついつい幼い頃の自分が愛しくなって、Sにはなかった「努める」を入れたくなっちゃったんじゃないかなと、私はそんな風に想像するのでした。その頃弱かったことを認められるのは今の強さなんだよね。こんなところにもヒカルの成長が感じられて喜ばしいのでありましたとさ。